電気設備業界専門の求人サイト『工事士.com』( https://koujishi.com/ )を運営する株式会社H&Company
(本社:東京都港区、代表取締役:佐々木貴志)は、国土交通省が公表した「設備工事業に係る受注高調査結果(2021年度)」をもとに、2021年度の電気設備工事業を振り返るとともに2022年度下期の予測についてまとめ、レポートを公開しました。
*受注高は、前年度比【6.2%増】の1兆6,530億円となった。コロナ禍にあった2020年度を経て
改善傾向に向かっていると推測される。
*一方で、施工高は前年度比【1.7%減】の1兆5,651億円となった。
*受注したものの施工できていない工事も多かったことから、手持ち工事高は【1兆1,257億円】となり、
過去2年を上回って推移していることが分かった。
*受注高が増えている理由の1つとして、省エネ対策などの目的で、電気設備に絡む助成制度が
国から数多く出されていることから、電気設備の更新や機器の導入に踏み切る事業者が多くなっていると
予想される。
加えて、IoTや次世代通信に関連した工事の増加やコロナ対策が進んでいることも踏まえると、
2022年度下期の展望は明るいと推測される。
1┃受注高調査
受注高とは、「契約を結んだ工事の請負金額分」のことで、将来の施工高です。そのため、将来の収入源を確保している数値として、重要な指標になります。2021年度の電気工事の受注高は、前年度比【6.2%増】の1兆6,530億円となりました。コロナ禍以前の2019年度と比較すると6.5%減ではありますが、改善傾向と言えるでしょう。(図1)

また、受注高を民間工事と官公庁工事に分けたところ、2021年度の民間工事受注高は【1兆4,991億円】となりました。2019年度と比較し【6.9%減】、また2020年度と比較し【9.0%増】となり、コロナ禍の2020年度を経て改善傾向にあります。(図2)
一方で、2021年度の官公庁工事受注高は【1,538億円】となりました。2019年度と比較し【3.2%減】、また2020年度と比較し【15.2%減】となっています。

2┃施工高調査
施工高とは、「契約済の工事における請負金額のうち、施工が完了した部分の金額」のことで、売り上げが立っている金額を指します。
2021年度の電気工事の施工高は、前年度比【1.7%減】の1兆5,651億円となりました。
コロナ禍以前の2019年度と比較しても【9.3%減】となっています。(図3)

また、施工高を民間工事と官公庁工事に分けたところ、2021年度の民間工事施工高は【1兆4,075億円】となりました。2019年度と比較し【10.2%減】、また2020年度と比較し【1.2%減】となり、右肩下がりで推移していることがわかります。(図4)
一方で、2021年度の官公庁工事施工高は【1,576億円】となりました。2019年度と比較し【0.3%減】、また2020年度と比較し【6.0%減】となっています。

新型コロナウイルス対策で工場などが閉鎖となったことや、ウッドショックの影響で資材が足りず、住宅設備工事の延期・納期の遅延等が発生したことで、電気設備業界もそのあおりを受けていることが原因と考えられます。
2021年度は、工事を受注するよりも、完成させる方が難しいという側面もあったと見受けられます。
3┃手持ち工事高調査
手持ち工事高とは、「契約済の工事における請負金額のうち未着手の工事に相当する金額分」のことで、今後の電気工事市場を展望する指標の1つとなります。
2021年度の電気工事の手持ち工事高は、前年度比【10.5%増】の1兆1,257億円となりました。コロナ禍以前の2019年度と比較しても【4.2%増】となり、過去2年を上回って推移していることがわかります。(図5)

また、手持ち工事高を民間工事と官公庁工事に分けたところ、2021年度の民間工事手持ち高は【9,761億円】となりました。2019年度と比較し【1.9%増】、また2020年度と比較し【12.0%増】となり、過去2年を上回って推移していることがわかります。(図6)
一方で、2021年度の官公庁工事手持ち工事高は【1,496億円】となりました。2019年度と比較し【22.6%増】、また2020年度と比較し【1.5%増】となり、右肩上がりで推移していることが分かります。

ただ、全体の8~9割を民間工事が占めているため、今後の民間工事の推移が電気工事市場に大きな影響を与えると考えられます。
2021年度の電気設備業界は、新型コロナウイルス対策で工場などが閉鎖となったことや、ウッドショックの影響で資材が足りず、住宅設備工事の延期・納期の遅延等が発生したことで、そのあおりを受ける結果となりました。
その一方で、受注工事高が前年度比【6.2%増】の1兆6,530億円となり、コロナ禍にあった2020年度を経て改善傾向に向かっていると言えます。
受注高が増えた背景の1つとして、省エネ対策やCO2排出量の抑制を図るために国から発信されている、補助事業や税制措置が考えられます。電気設備に絡む助成制度も多くあることから、電気設備の更新や機器の導入に踏み切る事業者が多くなっていると予想されます。
特に、IoTや次世代通信に関連した仕事、電気自動車普及に向けた充電施設の拡大工事などの増加は今後も期待できます。これらは新規設置だけでなくメンテナンスが必要なので、保守点検にともなう工事も増えていき、継続的な需要が発生する見通しです。
コロナ対策も進む中で、2022年度下期の電気設備業界においてはさらなる業績改善が期待できるでしょう。